断熱だけじゃ不十分?家づくりで後悔しないために知っておきたい“性能バランス”の話
2025.05.20

家づくりのご相談を受けていると、「断熱性能って大事ですよね?」というお話をされる方が増えたように感じます。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進などもあってか、家の「性能」についての関心が高まっているのはうれしいことです。
ただ、ちょっと気になっているのが—
どうしても「断熱性能」だけに注目が集まりすぎているように見える点です。
本当に大切なのは、断熱・気密・換気のバランス。
今日は、そのあたりのお話をしてみようと思います。
こんにちは。三協建設の堀内です。
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UA値ってなに?小さいほどいいの?
断熱性能を表す指標としてよく出てくるのが「UA値(ユーエーち)」です。
これは、住宅全体の熱の逃げにくさを表す数値で、小さいほど断熱性能が高いことを意味します。
例えば、愛知県で家を建てる場合、UA値は0.87以下を目指すのがひとつの基準。
さらに性能の高い家なら、0.56以下を目標とすることもあります。
ただし、この数値が小さくなればなるほど、当然ながら建築コストも上がっていきます。
「じゃあ、少しでも小さくすれば安心!」…というわけでもないんですね。
UA値はあくまで“計算値”です
UA値は、あくまで設計段階での計算によって求められるものです。
理想的な施工状態(=断熱材がきれいに隙間なく入っていて、気密性も完璧な状態)を前提として算出されているので、実際の現場ではその通りになるとは限りません。
たとえば、施工精度が低ければ、「断熱性能の高い家を建てたのに、なぜか冬は寒い…」なんてことも起こり得ます。
現場で測る「C値」も大事
そこで、もうひとつ注目してほしいのが「C値(シーチ)」です。
これは実際の現場で行う“気密測定”の数値で、家にどれくらいの隙間があるかを示します。
こちらは計算ではなく実測。
つまり“今、建っているこの家の状態”をきちんと測れるわけです。
気密性能も、やみくもに高ければいいというものではありませんが、最低でも「C値1.0以下」を目指したいところです。
高気密高断熱にすると…実は結露のリスクも?
もうひとつ忘れてはいけないのが、「断熱と気密を高める=家を“魔法瓶”状態にする」ということ。
冬の寒さを防ぐ点では最高なのですが、一方で、湿気や熱がこもりやすくなり、壁の中で「内部結露」が起きやすくなることも。
特に、外断熱工法などで換気計画が不十分だと、目に見えないところでカビが発生してしまうこともあるんです。
ダウンジャケットとセーターの例えで考える
ここで少し、分かりやすい例えを。
高気密高断熱の家は、いわば「ダウンジャケット」。
外の寒さからしっかり守ってくれるけれど、運動すれば中は蒸れてベタベタになりますよね。
ベタベタにならない為には内側に溜まった湿気を逃がさないといけません。
これが高気密高断熱と換気の関係です。
一方で、セーターのように“呼吸する素材”を使った断熱材なら、湿気を外に逃がすこともできます。
素材選びにも、目に見えない快適さを左右する大事な役割があるんです。
大切なのは“バランス”
断熱・気密・換気。
この3つは、どれか1つだけ突出して良ければいいというものではありません。
大事なのは、家全体のバランス。
そして、自分たちの暮らし方や予算に合った性能を選ぶことです。
「とにかく性能のいい家を建てたい!」という気持ちはよくわかります。
でも、数字だけを追いかけすぎると、思わぬところで後悔することもあるのです。
“地味だけど大切なこと”を一緒に考えてみませんか?
性能の話って、どうしても華やかさがない分、後回しにされがちです。
でも、目には見えないところにこそ、家づくりの“本質”が詰まっていると思います。
三協建設では、こうしたお話をじっくり聞ける「家づくり勉強会」を開催しています。
個別でのご相談も可能ですので、気軽にお問い合わせくださいね。
あなたと、あなたの家族が「本当に心地よい」と思える住まいづくりを、一緒に考えていけたら嬉しいです。
では、また。